日記1

今年のテーマはなんか講談社から出ている『現代思想冒険者たち』シリーズを読もうみたいになっています。

ここ一週間で読んだのは,『現代思想冒険者たち17 アレント』です。

アレント―公共性の復権 (現代思想の冒険者たち)

アレント―公共性の復権 (現代思想の冒険者たち)

仕事が忙しくならないうちに哲学・思想系の著名な人を押さえておこうと思いまして大学院1年のときからこつこつと読んでいます。この本で9冊目かな。


僕の哲学・思想の本を読むようになったのは,考え方というか発想のいろんなパターンをマスターしていろんな面白いことが考えられたらなと思ったからです。そしたら,Aという思想家はBという思想家の影響を受けて,Bという思想家はCという思想家の影響を受けてみたいことが結構あってその思想家同士の関わり合いが面白くなってしまったのですよ。まあ思想史的な発想ですね。


今回読んだ思想家ハンナ・アレント(個人的にはアーレントのほうが好き)は哲学者というよりは思想家という印象を受けました。彼女はユダヤ人家庭に生まれたユダヤ人です。マルティン・ハイデガーの下で哲学を学び,ナチスの迫害によりアメリカに逃れ主著『全体主義の起原』を書き著した人です。


個人的にはアレントと妻のいたハイデガーの不倫関係(笑)について興味があって読んだのですが,思想自体も結構面白かったです。彼女の提唱する『活動としての政治』という概念がとても印象に残りました。彼女の定義によると『活動』とは人と人の間で行われる行為であり,従来の政治思想は人と物との関係に重点を置き過ぎているというのです。

確かに従来の政治思想の前提はホッブスの「万人に万人に対する闘争状態」を前提としたもので,これが法制度の暗黙の了解になっています。アレントは,ギリシアにおけるポリスのような人間と人間が関わり合う領域として公共性領域というものを重視し,積極的に政治に関わる仕組みについて考察しています。

僕の理解した彼女の思想はこんなもん。従来の哲学・思想は人間というものに対して悲観的なのですが,彼女の思想は人間の醜い部分を直視しそれを理解しつつも,敢えて人間の持つ可能性を肯定的に捕らえる考え方がとても好感が持てました。『アウシュビッツの後に詩を書くのは野蛮だ』といったアドルノよりは読んでてすっきりするかな。ただ,彼女の思想はマックス・ヴェーバーのいうところの理念型的な性格を持つので常識的な感覚からすれ「ええっ」的な言説があるかなと思いました。


著名人は不倫した人も著名人になってしまって過去をほじくり返されることもあるのね。僕は普通の人でよかったなあと思いました(笑)